Tuesday, February 28, 2012

冷戦下に作られた毛糸Peace Fleece

今日は先日買ったPeace Fleece Worstedについてお話したいと思います。

Peace Fleeceという会社のことはKnitting for Peace: Make the World a Better Place One Stitch at a Timeという本を読んでからずっと気になっていました。



このPeace Fleeceという会社は1985年に、Peter Hagertyさんと奥さんのMarty Tracyさんが冷戦下にあったソビエトから羊毛を買ったことから始まります。

冷戦の緊張を日々感じる中で、PeterさんとMartyさんはソビエトで作られた羊毛を買い、アメリカの羊毛と混ぜた毛糸Peace Fleeceを作ろうとしたのです。

ベトナム戦争を経験したPeterさんは、戦争の中でもたくさん人たちが家族を思い、日々の暮らしを営んでいることを実感し、小さいながらもこうした個人の貿易で、ソビエト冷戦の緊張が緩むきっかけになればと願ったそうです。


ピースフリースの話を読むと、
ますますこの毛糸がいとおしくなります。

もちろん、冷戦下のため貿易は困難、さまざまな紆余曲折はあるものの現在に至るまでこの会社はロシアだけではなく、東ヨーロッパ、中東諸国などから羊毛を買い、経済的や政治的な理由で生活が困難な現地の人たちへ雇用の機会を与えるだけでなく、羊毛というツールを使ってそれぞれの国に住む羊毛農場の人たちや職人たちの交流を進めてきています。

国際教育を学び、その後手作りに没頭している私としては、このPeace Fleeceの国際交流促進のヴィジョンにはとても共感するところがあり、これからもずっと見守っていきたいと思っています。

このPeterさんのお話はとても素敵なインスピレーションあふれるストーリーなので、是非Peace Fleeceのホームページをのぞいてみてください。ここの毛糸は直接Peace Fleeceからも購入できますよ。

ちなみにこの毛糸のラベルにはWarm Wool From A Cold War (冷戦下からの暖かい毛糸)と書いてあります。この会社のヴィジョンがしっかり表れてますね。



毛糸の色合いもどれもとっても素敵で、単色の中にも少しずつ違う色が混ざっていて、深みがあります。私の買ったGeorgia Roseはローズピンク色ですが、よく見るとオレンジと白いつぶつぶっぽい色も入ってるのです。ゲージは4sts/ インチなので、Worsted weightよりもAran weightといったほうがいいかもしれません。

手触りはモヘアが入ってるけれど、肌に直接あたるものよりも、セーターやベスト、帽子向きかもしれません。テスト用の編地を手洗いしてみたところ、毛糸が膨らんでやわらかくなりました。色落ちもまったくありませんでした。他のレビューによると、ピリングも少なく、耐久性も良いそうです。


このPeace Fleeceには毛糸以外にも、パターンや編み針、ボタンも売っています。現地の職人さんが手描きをしたボタンは素朴でとってもかわいいです。この素朴な毛糸でカーディガンを編んだら、是非このボタンをつかってみたい!

アメリカにもいい毛糸がたくさんありますね。これからもいろいろ発見していきたいと思います。


Thursday, February 23, 2012

Madrona Fiber Artsでのクラスとお買い物

シアトルの南にあるタコマで毎年行われているMadrona Fiber Artsというフェスティバルに先週の土曜日行ってきました。

残念ながら、写真撮影は許されなかったため会場の写真はありませんが、クラスのことと楽しみにしていたマーケットプレイス(出店)のお話をしたいと思います。

このマドローナは4日間のイベント。編み物と紡ぎをやる人たち向けにいろいろなクラスがありました。編み物のクラス-Twined Knitting, Fair Isle, Colorwork, Helix Knitting, Brioche, Double Knittingやセーターのデザインの仕方や仕上げ方、ラトビアのフィンガレスグローブ、レース編み、ビーズ編みなどに加えて、紡ぎ人向けには、フリースの種類や扱い方について、どういうブリードを組み合わせて毛糸を作るかなど、プログラムを見てるだけでも楽しくなります。


私はその中でも、Publishing Options for Texitle Folksというクラスを取りました。3時間のクラスで、出版について一体何を話すんだろうと思っていたものの、実際に聞いてみるとあまりの情報の多さにびっくり。

講師のDeborah Robsonさんは、編み物と紡ぎ関係の数々の本を出版してきた人で、編集者としても働いてきた方。Knitting Dailyにも何度か出演されてました。私はこの方が書いた紡ぎ本、The Fleece and Fiber Sourcebookを愛読していて、羊の種類の勉強をするにはとってもすばらしい本です。本というより図鑑といったほうがいいのかも。Deborahさんはそれぞれの羊とその羊毛のカラー写真が載っている、誰にとってもリソースになる本が書きたくて、膨大なリサーチと執筆時間をかけて書き上げたもの。この業界ではずーっと大切にされる本だろうなと思います。



このクラスではそのDeborahさんが編み物やテキスタイル、紡ぎ関係の本を出版するためのプロポーザルの書き方、ネットワーキング、コピーライトの守り方、オリジナルの編み図を雑誌に投稿して、選ばれるまでの過程や編み図を書く時の基本的なルールなどいろいろな話をしてくれました。

私自身は本を出版する!という気持ちよりも、ただこの編み物業界の出版事情やデザイナーさんたちはどういう風な経路をたどって、出版なり、自分のパターンを売ったりしてるのかというのは興味があったので、とても勉強になりました。

その中でも驚いたのが、たとえば大手の出版社から一冊25ドルの本を出して、それが売れたとしても著者に入ってくるのはたったの1ドル!!!とのこと。これはアメリカだから?それとも日本もこんなものなのかしら??

だからかデザイナーさんたちは本を出版するだけではなく、自分のホームページから独自に編み図を売ったり、雑誌に記事を書いたり、ブログでアフィリエイトプログラムを活用したり、毛糸会社と提携したり、イベントでクラスを教えたり、自分の毛糸ラインを作ったりなど、いろんなことを同時にやることが多いそうです。

隣にすわっていたおば様も、この1ドルにはびっくりしていて、「あら、やっぱり出版なんて考えやめようかしら・・・?」といってました。

でも自費出版をすると、その分、自分の手元に入ってくるお金は増えるものの、そもそも本を書くためのリサーチやデザイン、写真、編集などもろもろのことをする費用が手元にないと書き始めることさえ難しいとのこと。

自分の出版会社を持っているDeborahさんですが、このFiber SourceBookは他の会社から出版されていたので、生徒の一人が「なんで自分の出版会社から出さなかったの?」という質問にたいして、「うちの出版会社にはお金がないから、カラー写真付きのハードカバー本なんて出せないの。大きな会社ほど懐が深いからこそあの本が実現したのよ」とのこと。なるほどー。

とにかく、目からうろこの出版事情でした。


ちなみにこのクラス、20人ほど生徒さんがいたのですが、30代の私は恐らく最少年齢だったと思われます。フェスティバル自体は30代の人よりもはるかに50~60代の方が多数でした。これは編み物&紡ぎイベント全体に言えることなのかもしれません。


そして、楽しみにしていたマーケットプレイス。これはクラスを取っていなくても自由に入れるようになってます。

出店は去年と同じお店もありましたが、新しいお店もいくつかありました。いくつかのお店の人と話したり、毛糸を吟味したり、紬ぎ車に触ってみたりと、小さい場所なのに2時間以上もうろついてしまいました。

そして今回購入した毛糸は、Black Water Abbey Yarnsというアイルランドから輸入している毛糸を売っているコロラドの毛糸会社のWorsted yarn。小さな会社らしく、オーナーとそのお母さんと親戚でなんとか切り盛りしてるようです。今はオーナーの女性、お母様とアイルランドに旅行に行った際にこのちいさな毛糸生産工場を発見し、それから交渉して自分でアメリカに輸入することになったそうです。


Black Water Abbey Yarns Worstedのカラーカード。

アイルランドの小さい工場で作られている毛糸なので、毛糸屋さんむけのWholesaleは一切なく、オンラインショップのみで販売しているということもあって、カラーカードを無料でもらうことが出来ました!

ここの毛糸はざらっとした硬い感触の2Plyの毛糸。厳しいアイルランドの気候のなかで過ごしている羊の毛という感じがぷんぷんします。いわゆる「itchy」かゆい毛糸なので好き嫌いがはっきり分かれるかも。アメリカの人はどうも素肌にセーターを着る人が多いようで、こういう毛糸よりもメリノとかを好むような気がします。私はセーターの下にもしっかり着込むので、かゆい毛糸でも大丈夫。

アイルランドといえばアラン模様!まさに縄編みがきれいに浮き上がりそうな毛糸です。ラオリンがまだ含まれているためウォータープルーフ。毛玉も出来にくいし、洗うたびに柔らかく暖かくなるんですよね。長年着る用のセーターにはもってこいだと思います。


この色はGray Seaといいます。

で、早速アラン模様のベストを今週から編んでます。アイルランド製の毛糸で、アランベスト。とーっても正統的な感じです。


もうすぐ後ろ身頃が終わります。

パターンはこのお店でかったHawthorneベストというもの。お店でサンプルがあったので試着してみたらぴったりで、周りの人にも似合う!と言われたのに嬉しくなり毛糸に加え、編み図も購入。

とくにウエストシェイプもないベーシックな形なので、体型がはげしく変化しない限り、10年後くらいでも着れると思います。


出来上がるのが楽しみです!

Thursday, February 16, 2012

Value Villageでの掘り出し物

アメリカには日本で言うリサイクルショップみたいなお店がたくさんあります。

グッドウィルやバリュービレッジなどは代表的なお店で、洋服や靴、寝具、家具、食器、キッチン用品、おもちゃ、電化製品、本などとりあえず何でもあります。買取ショップではないので、商品のすべては人が要らなくなってお店に寄付したもので成り立っています。だから値段も安い。そのかわり状態が悪いものも沢山あって、「これは売り物にしていいのかしら・・・?」と思うようなものもあります。このあたりの商品の基準が日本人にはびっくりなことも。


そんな中でも、いままで布地や刺繍糸のセット、ビンテージの洋服のパターンなどを見つけました。そう、目をこらして探してみると、結構クラフト関係のものも見つかるのです。

でも今日見つけたものは本当の掘り出し物でした!


はじめまして、アディターボさん。


そう、ドイツのSkacelの編み針Addi Turbo!通常16ドルから20ドル以上するもので、アメリカにはこの編み針のファンが沢山います。なんと1.99ドル!Hooray, バリュービレッジ!

私はいままで竹製の編み針しか使ったことなくて、しかもAddi は編み針のなかでもお値段がお高めのものだったので、使いたいなぁと横目で見ていた商品でした。


今日早速使ってみます。うれしいなあ、うれしいなあ。

Knitterのみなさま、スリフトショップは意外に見逃せませんよー。

Happy thrifting!!

Monday, February 13, 2012

ウール刺繍の雲ブローチ

夜型の私には、真夜中過ぎた頃からいろいろなひらめきが訪れたり、何かの衝動に駆られることがよくあります。

その先日駆られてしまった衝動は「刺繍」でした。何だか使うのがもったいなくて、パッケージに入れたまま飾っておいたTako FibersさんのCrewel embroideryキット「Cloud Pin」。パリッと封をあけて、早速開始したのが夜中1時ごろ。

雲の模様があらかじめフェルトに書いてあるので、その上をなぞるようにフレンチナッツスティッチで覆っていきます。


この雲はフレンチノットでむくむくした質感を出していきます。

小学校のころ、手芸の中でも刺繍だけは何だか楽しくて、しばらくはまっていたことがあります。どういうきっかけだったのか忘れてしまったけれど、きっと刺繍の先生だった祖母と、とにかく何でも器用にモノを作れてしまう母の影響だったのは確か。

小学校の家庭科の授業で、実際に簡単な刺繍を教わる前には、大体のスティッチをやったことがあったため、家庭科の先生には「かわいくない子ね」的に扱われたことも・・・。なんだか懐かしい思い出です。


さてこのキット。フェルトにウール刺繍をして、ピンをつけてブローチにするようになってます。なかにはウール刺繍(Crewel Embroidery)用の毛糸が入ってます。

いままではDMCの糸で刺繍しかしたことがなかったので、ウールを刺繍に使えるのね!と内心わくわく。ウールの世界の幅がまた広がってしまいました。


調べてみると、この毛糸はおなじみBrown Sheep社のWaverlyという毛糸。ニードルポイントやこういう刺繍用に使われる3Plyのもの。実際使うときはこの3Plyになってる一本一本を別々にして使っていきます。刺繍糸と同じ感じですね。



近くの毛糸やさんではこんな風に小さいSkeinで売ってました。

このブローチで使ったスティッチは、フレンチナッツスティッチ(雲の部分)とスピリットスティッチ(雨の枠の部分)とサテンスティッチ(雨の全体の部分)です。ピンクの毛糸は自前です。

せっかくだから顔もつけて・・・


できあがり!


Wednesday, February 8, 2012

いろいろリストウォーマー


大好評だったリストウォーマー。母からのリクエストにお答えして、段染めの毛糸でいくつかまた編んでみました。

手前のは4x1リブ編み。奥のはスパイラルリブ編みです。あとあと使ううちに伸びて馴染んでくることを仮定して、かなりきつめに編みました。手前の毛糸はクロバーのランドネの残り糸。奥のは確かダイヤ毛糸のものだったと思います。


他にもアヴリルの「レインボーループの手袋」キットの毛糸が実家から送られてきたので、これも指なし手袋かリストウォーマーになる予定。綺麗なルビー色のシルクとウールで出来ている「レゴ」という糸と、パープル系の小さいループがくっついているレインボーループという糸の2本取りになっています。



コーン巻きです。
 それだけでもかわいい糸なので、メリヤス編みでいいでしょうと思い試し編みしてみました。


このレインボーループはちょっと引っかかりやすいのですが、ポコポコ顔を出すさまがかわいくて、作品を編むのが楽しみです。シルクの光沢と、ループのふわふわが面白い組み合わせ。さすがアヴリルです。

ここの糸はどんなに小さい余り糸でもきちんと取って置きたくなるものばかり。少し残っていたのをビーズと合わせてピアスにしたり、かぎ編みでお花やボールを編んでみたり、ラッピングのコサージュ作りにしてみたり・・・。




眺めてるだけでもうれしくなります。実際に編むよりも眺めてる時間のほうが長いかも。

そうそう、今月シアトルの南にあるタコマでMadrona Fiber Arts が行われます。この地域では結構大きなイベントで、4日間に渡り「編み、織り、紡ぎ」に関する様々なクラスや講演があるのと、いろんな場所からの毛糸やさんの出店もあります。

私は土曜日にクラスを受ける予定。去年行ったときよりも、はるかに編み、毛糸全般に関する知識が増えたと思うので、今回はますます楽しみ!

またその時の様子はレポートしますね。

Monday, February 6, 2012

Nordic Heritage Museumに行く。

シアトルのBallard(バラード)という地域は、北欧色の強い街です。

というのも、1800年代に北欧移民の人たちがたくさん住み着いたのがこのエリアだったからなのだそうです。普通のスーパーにもアメリカの国旗でなく、北欧諸国の国旗がはためいていたりします。いろんな国の人で出来ているアメリカらしい光景ね。

このBallardに前から気になっていたNordic Heritage Museumがあったので、週末に早速行ってきました。

以前は学校だった建物を利用しています。
さて、この北欧諸国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランド、デンマーク)ですが、どれも国旗が似てますよね??これはデンマークの国旗を最初に元にして他の国の国旗が出来たそうです。

どれがどの国の国旗だったしら・・・とちょっと自信がなかった私。
館内で便利なポスターを見つけたので、パシャリ。

これをみて国旗の復習をしましょう。

本来美術館は大好きなのですが、特に北欧に興味を持った理由はもちろん編み物!のほかに旦那のお父さん方は1800年代に北欧からアメリカに来たこともあり、いまは自分の名字も北欧系だということもあってずっと行ってみたいと思ってました。

まず1階は北欧移民の歴史。どういう背景があって北欧諸国を離れアメリカに新しい土地や仕事を求めて人がやってきたのかが詳しく説明されています。その理由は政治的、宗教的、飢饉、人口過多、病気の蔓延などさまざま。



アメリカには船で何週間もかけてニューヨークのエリス島を目指したそうです。ここには出発前の現地の船場にアメリカに行くための必需品を揃えるお店が再現されていました。ここで長い船旅に必要な食事や衣料品などを揃えたのだそう。

再現されたお店の様子。
よーく見てみると、あっ!!


生地に毛糸も売ってます!こんなところで妙にテンションがあがってしまいました。

他にも実際にアメリカに着いてからの生活の様子などの展示も。

はるばるやってきた先に待ってたのは、
とってもきびしい生活。

1階の展示数の多さにすでにかなり満足していたのですが、2階に行くと更に北欧移民の人たちのメインの仕事であった漁業と林業についての展示、そして衣装や家具、手工芸の展示がありました。

現代の陶器の展示も!

マッシュルーム柄。

ピンクのお魚?かわいい。
そしてついに見つけました。


Stone Spindle Whorl。
これは石器時代にデンマークで使われていたものらしいです。
ウールだけでなく、コットンや麻なども紡いだそうです。

ノルウェーのセルブーで編まれていたミトン。
白と黒の細い毛糸で細かく編みます。
エイトスター(八つ星)のデザインが有名です。


糸巻き機も。
木製で素敵です。

織物の長い歴史を持つ北欧。
もちろん紡ぎ車も。

そのほか、3階には5カ国それぞれの国についての詳しい展示もありました。でもこれらの国では編み物って本当に生活の一部なんだなあと実感。アイスランドの展示ではロピーのセーターも飾ってありました。なかでも驚いたのが林業に携わる男性たちは仕事が終わって夜の食事の後はカードゲームを楽しむほか、糸紡ぎもしていたのだそう。きこりさんが糸紡ぎをしている姿、ちょっと見てみたいです。

あと編み物以外に興味が湧いたのが、デンマークのボビンレース。その精巧なレースは職人技。手工芸って本当にすばらしいです。

展示されてるのはボビンです。それぞれ細工がいろいろされてます。

こんなにたくさんのボビンを使うなんて!すごい技術です。


この美術館、本当に見どころいっぱいでした。全部見終わるのに2時間くらいかかったかもしれません。


興味のある方は是非いってみてくださいねー。毎月ニットカフェもやっているそうです。

Nordic Heritage Museum
3014 NW 67th Street
Seattle, WA 98117